武将俑 秦(紀元前238~207年)
陜西省始皇帝陵兵馬俑坑出土
20世紀考古学上、最大の発見とされた秦始皇帝陵出土の武将俑である。等身大以上に作製された、精密かつ芸術性の高い陶製の将軍・騎馬・兵士像は、始皇帝軍団の威容を今に伝えてなお余りある。
後の漢代に作られた型押し製で木偶坊としか言い様のない表情の乏しい小型兵馬俑に比較して、同じものの二つとして存在しない、圧倒的な迫力を有する秦兵馬俑坑巨像群は、秦始皇帝の空前絶後の権力と恐怖政治を物語っていると言えよう。本例は軍隊を指揮する冷静かつ豪胆な武将の性格内面をも見事に描写しているように思われる。
Photo & Text by 吉村 信(福井市)