鯢魚紋形陶瓶
仰韶文化晩期(紀元前5000~3000年前)

仰韶文化は、中国黄河中流域の彩陶を伴う新石器文化の総称で、最初、名著「黄土地帯」で知られるスウェーデンの考古学者アンダーソンによってその存在が発見された。鯢魚(ユーユイー)は娃娃(ワーワー)魚(ユイー)とも言い、山椒魚のことである。山海経・北山経には「洪水が起こると、山間の急流に栖んでいた生物が、下流に押し流されてくるがその中に多くの人魚がいる。四つ足でその声は赤児の泣き声に似る」とある。頭部が丸く、鰓が髭の様に見え、鱗があり四つ足で、手指があるので、中国神話に出てくる「龍身而人頭」の伏羲氏に見立てられ、神格化され、祭器と思われる陶器に描かれたものと思われる。

Photo & Text by 吉村 信(福井市)